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2018年4月

軽水炉と核兵器

日本での原発の宣伝は「原発と原爆は違う」という大きな基調の元に行われていますが、発電に使用される軽水炉であっても核拡散問題と無縁ではありません。そこには 「原子炉級Puによる爆弾製造」と「軽水炉による兵器級Pu製造」という二つの大きな問題があります。
 
「プルトニウムのグレード」
Puというと、長崎型原爆の材料ということで有名ですね。Puは天然には存在していなくて、原子炉で作られます。ウランを燃料にした原子炉を動かすとPuが沢山できるので、これが核拡散につながるという問題になります。
 
爆弾の材料としてみた場合、Puには等級(グレード)が存在します。
 
Puの同位体239の比率が高く典型的には93%、それ以上のものは「兵器級」と呼ばれます。
爆竹をばらして火をつけると爆発せずに燃えるだけというのは経験したことがある人が多いと思いますが、一度にたくさんの反応を起こさなければ爆発というのは威力が小さくなります。Puの場合、Pu240の中性子が問題となりウランのようなガンバレル型の爆弾を作りにくいといのはよく知られた話で、Pu239の比率が大きいことが重要になります。
 
Pu239はU238が中性子を吸収することで生成されるのですが、それが更に中性子を吸収してPu240になる前に中性子の照射を止めることが大事なので、兵器用のPuの製造には原子炉運転中に燃料が交換できる型の原子炉が使用されます。
 
原発に利用される軽水炉の場合、燃料交換は年に一度、おおよそ4年ほど原子炉の中に燃料棒が入っていますが、兵器用のPu生産では、それりもはるかに短い期間で燃料を取り換えます。
 
4年ほど原子炉の中に燃料が入っていれば、Puの240の比率は大きくなり「原子炉級」と呼ばれるようになります。このようなPuで爆弾を作ると、「兵器級」のPuよりも製造は困難で、信頼性にも問題があると思われています。ただし、核不拡散という面では大問題です。これを世界に紹介した有名な論文(Mark論文)があるのですが、
 
日本に紹介されると、どうも軽水炉のプルトニウムでは爆弾は作れない、という雰囲気が強調されるのですね。(今井論文)
「原子炉級プルトニウムと兵器級プルトニウム調査報告書」 2001年5月 社団法人 原子燃料政策研究会
http://www.cnfc.or.jp/j/proposal/reports/
 
世界的には原子炉級のPuも爆弾の材料とみなされ、我が国の保有するPuは40トンを超えます。4kgほどあれば核弾頭が作れるそうですから、1万のオーダーの在庫をもっているわけです。
 
「軽水炉による兵器級Puの製造」
さて、Mark論文を見ていると、燃焼度とPu同位体組成の図が出てきます。燃焼度というのは、中性子がどのくらい照射されたかを示しています。これを見ていると、軽水炉でひと月程度照射された燃料中のPuの同位体組成は「兵器級」ですね。
 
ではその時燃料中にPuはどの程度存在するのでしょうか。電気出力100万kWの発電用原子炉では一日に3kgほどのU235が核分裂します。そのうちの半分くらいがPuになるとして、一日1.5kg。ひと月では45kgほどのプルトニウムが生成されることになります。核弾頭一発では2~4kgほど使用されるそうですから、10発分程度ということにしておきましょう。いわゆる転換比はもう少し高いはずですが、ロスもありますし、大きく外れてはいないでしょう。
 
IAEAでも軽水炉による兵器級Puの製造能力は問題視されたりします。
https://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/ss-2001/PDF%20files/Session%2015/Paper%2015-08.pdf
日本は長い間「核廃絶は国是」と国民に説明してきましたのですが、Puに関しても「軽水炉で生成されるプルトニウムでは爆弾はできない」という教育をしてきました。それで安心して原発業界に入った核廃絶論者もいるのですよ。
 
その成果がこちらのコメント欄にあふれています。
「軽水炉での兵器級プルトニウム製造の可能性について」
https://togetter.com/li/729466
 
"「原子炉級」でも「兵器級」でもどのみち問題なのだから、細かいことは気にしない"というむきもあるでしょうが、「軽水炉では兵器級Puは作れない」というのは我が国の原子力に纏わる「神話」の一つなので、独立して認識する必要があると思います。

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